満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
誠の目はしっかりと疑問に形づくられている。

「なんで?魔法で鍵ってあかねぇ?」

「ん?開くよ。もちろん。」

「じゃぁなんで、そんなこと…?」

「その方が泥棒っぽいでしょ(笑)」

綾香はそう言ってどこからかトンカチを取り出した。

ガチャ。

空に小さな音が響いた。

…これ無駄に金かかるよな。盗む方も盗まれる方も…。

誠の小さな呟きを余所に綾香は部屋の中に侵入している。

かと思うと外に出てきた。

「置いてきたよ。鏡。」

そう言って綾香は下降していく。

それと同様に誠の体も…。

「もうすんだの?」

「うん、だって鏡置いてくるだけだもん。」


…俺いらなくねぇ?

誠の疑問は夜空の中に吸い込まれていった。

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