満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
目の前に迫り来る槍。

突き出された槍は音もなく空気を切り裂き誠を目標に捉える。

ビュッ

誠の耳元で切り裂かれた風の悲鳴が発せられた。

誠の顔の真横には銀色に輝く刃がぴったりとよせられている。

「少しでも不穏な動きをしたら切るわよ。」

目の前に迫った千草の瞳は真っ直ぐに誠をみつめている。

それが一瞬で起きた出来事だった。

まさに瞬く間、千草は瞬き一つの間に5メートル以上はあった距離を詰め、誠に槍をつきつけている。

誠は一瞬遅れてそれを理解した。

が、理解しただけであった。いつの間にか槍は首筋に添えられ、千草の視線は突き刺さらんばかりに誠に向けられている。

…動きようもない…か…。

誠はじんわりとにじんできた汗も拭えずにいた。
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