36.8℃の微熱。
「それって脅迫ですよね?」
すると今まで事の一部始終を見ていた王子がスッと一歩前に出た。
あたしの腕をグイッと引いて、自分に引き寄せながらそう言う。
「・・・・君、誰?」
「彼女のヒーローです」
「プッ。ヒーローて」
「俺は本気ですよ? 彼女が嫌がってなかったらそれはそれでいいと思ってました。でも実際はどうですか。これは塾の先生が・・・・いえ、大人がすることじゃない」
臆することなく先生を睨みつけ、早口でそう言う王子は本当にヒーローだと思った。
王子の言っていることは正論だ。
あたしは何度、先生の横暴っぷりに振り回されてきたことか・・・・思い出すと泣けてくる。
最初は笑いながら聞いていた先生も、最後の一言は効いたらしく。
王子を鼻で笑うような態度から一変して、彼をきつく睨み返した。
「ふぅ〜ん。それで君はどうするつもり? 江田ちゃんの放課後はもう俺のモンなんだけど?」
「奪い返すまでです」
「そう。ま、せいぜい頑張って」
「望むところです」
え・・・・。