36.8℃の微熱。
 
えええ、この展開って一体・・・・。

奪い返すとか望むところとか、何を言っているの王子。

それじゃあまるで、王子があたしのことを好きみたいじゃん!


軽くめまいを起こしそうになっていると、王子がさらにあたしの腕をグイッと引いた。

その衝撃に少しよろめくあたし。


「行こう、江田さん。こんな人につき合わなくていい」

「・・・・えっ? あ、ちょっと!」


そしてそのまま、王子に引っぱられ来た道を引き返しはじめた。

あたしの腕をつかんだままグイグイ引っぱっていく王子、振り返ると妙に爽やかな顔で笑う先生。

これは一体全体・・・・!?










「・・・・なんでもっと早く言ってくれなかったの」


駅に着くと、王子はふぅーっと息をはいてからそう言った。

あたしの腕はまだつかんだまま、心なしかさっきより力が強い。


「ちょっと浅野君・・・・痛いよ」

「あ、ごめん」

「ううん」


どうしちゃったの王子。

王子ってこんな人だったっけ? ・・・・分からない。
 

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