36.8℃の微熱。
だいたいあたしは、王子のことを知っているようで実は知らない。
文庫本が好きなのは知っているけど、何を読んでいるかまでは聞いたこともないから知らない。
理系が得意なのは知っているけど具体的に何が好きなのかも聞いたことがないから知らない。
数字を教えてもらっているのはただ単に“得意そう”だったから。
教室でも図書館でも物静かな王子が、実際は熱いところとか。
力が強かったり、ちゃんと“男”だっていうところとか。
そういう場面を初めて目の当たりにして、ショック・・・・じゃないけど、それに近い感情になった。
なんにも知らなかったんだなぁ、って、自分自身に・・・・。
「あの、さ、江田さん」
「はははいっ!」
「あ、はは・・・・」
「はは」
あわわわ。
いきなり大きな声を出すから驚かせちゃったよ王子を!
やだ、あたしったら。意識しまくりじゃん! 痛い子じゃん!!
「えーっと、なにかな、浅野君」
「さっきのことなんだけど・・・・」
「うん」
「うん・・・・」