36.8℃の微熱。
 
ううっ、気まずい。

ユカちゃんからのメールよりさらに気まずいよ、この空気。

王子もあたしも「うん」「うん」ばかりで、それからしばらく、駅前を足早に過ぎ去る人たちをただ眺めていただけだった。


何やってんだろう、あたし。

こんなことになるはずじゃなかったのになぁ、明日から顔合わせずらいよ王子とも先生とも。

どんな顔して会ったらいいか、誰か教えてください。はぁ。


すると───・・。


ブー、ブー、ブー。

気まずい空気を一掃するように、ポケットの中の携帯が震えた。


「鳴ってるよ。電話じゃない?」

「あ、うん。あたしだ・・・・ちょっとごめんね。も、もしもし?」

『あー、俺だけど』


それはお兄ちゃんからの電話。

外にいるらしく、声の向こうから横断歩道の点滅音が聞こえた。

あたしは「なに?」と聞きながら少し王子から離れる。

王子と気まずかっただけに、相手がお兄ちゃんでもホッとした。


『オカンから頼まれ事。帰りに牛乳買ってこいって。・・・・てか、お前塾じゃなかったか?』
 

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