36.8℃の微熱。
 
ツー、ツー、ツー・・・・。

むなしく響く機械音。

結局、近くにいるはずのお兄ちゃんの姿は見つけられなかった。


「電話、誰から?」


力なく携帯を耳から離すと、待っていたように王子が聞く。

自惚れてもいいなら、あたしが電話をしていたときの王子はすごく落ち着かない様子で、しきりに相手を気にしているようだった。

そこが嬉しくて、あたしの心臓は電話をしていながらも、またとくん、とくんと跳ねていた。


「お兄ちゃんからだった。帰りに牛乳買ってこいってお母さんからの伝言頼まれたみたい」

「なんだ、そっかー・・・・。よかった、お兄さんで」


ドキンッ。

今度は心臓が大きく波打った。


だって王子・・・・。

相手がお兄ちゃんからだって分かった瞬間、心底ホッとしたって顔になったんだもん。

王子はあたしのことが好きなのかも、って勘違いしそうになる。


「ホントよかった。電話の相手があの先生だったらどうしようかと思ってたよ。マジでよかった」

「・・・・う、うん」


そっか、そっか。
 

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