36.8℃の微熱。
 
うんうん、そうだよね。

王子は先生からじゃないかって気がかりだっただけなんだよね。

すぐに電話があったワケだし。


「ん? どうかした?」


あたしの歯切れの悪い返事に、王子は不思議そうに首をかしげた。


「ううん、なんでもないよ」


そう言って笑顔を取り繕ったあたしは、思いのほか“好かれているかも”と期待していたことに自分でもびっくりした。

さっき先生の前であんなことを言っていたから、ときめきの感覚が麻痺しちゃったのかもしれない。

王子は優しいから・・・・。


「じゃあ、牛乳買いに行こうか。そうだ、どこかで時間も潰さないとお母さんに怪しまれるね」

「そうだね」

「だったらさ、ちょっとお茶しながら昼休みにできなかった数学やろうか。江田さんのために作ってきたんだ、要点ノート」

「ありがとう、浅野君・・・・」


でもね。

“あたしのため”なんて言われると、どんどん付け上がっちゃいそうなんだよ・・・・。

意地悪な先生とは正反対の王子に心が傾いていくんだ。

驚くくらいに。
 

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