36.8℃の微熱。
 
ふ、ふぅ〜ん・・・・。

先生もあの電車にねぇ。

だから拾ったわけだ、その携帯。


「でさぁ。俺、たまたま誰かさんと同じ車両だったみたいで」

「・・・・」

「カーブで電車が揺れて、鞄のポケットから携帯が落ちるところをたまたま見ちゃったワケよ」

「・・・・」

「すし詰め状態だったから、すぐには拾ってあげられなかったんだけど。誰かさんは気づいていないみたいで、サラリーマンの間で潰れそうになってたのさ」


うん、確かにあたしは潰れそうになったよ、あの電車で。

しっかり見られていたとは、なかなか世間も狭いのね。


「それで、ここからがとっても重要なんだけど」

「・・・・は、はい」


嫌な予感。

冷や汗が全身から吹き出そう。


「駅に着いて、みんなドヤドヤと降りたり乗ったりするじゃん? 人が動かないことには携帯拾えないし、ドアが開くと同時に手を伸ばしたのさ」

「・・・・」

「俺、運動神経いいからさ? 拾ったまではよかったんだけど」


あぁ、その先は言わなくても分かります。
 

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