36.8℃の微熱。
 
「ん?」


先生はなんでも言ってごらん? と首をかしげてあたしを見た。

ホントにこの人は・・・・。

あたしは「いえ、なんでも」と答えただけで、あとの言葉はゴクリと飲み込むことにした。


やってられない。

先生は憎らしい俺様魔王だけど、たまに甘い台詞も言える魔王だ。

それも、受け取る側が勘違いしてしまうような甘い台詞を、考えなしにポンポン言える・・・・。

ホント、タチが悪い。


「今日は泣いたりしてすみませんでした。次からはいつも通りのあたしに戻るんで、このことは忘れてください」


そう言って、あたしは勉強道具を鞄にしまって教室を出た。

自分でもずいぶん刺々しい言い方だったと思ったけど、そうしないとまた涙腺が緩みそうだった。


あたしに泣かれると困る───先生がそう言った意味。

きっとそれは、例えば親が子どもが駄々をこねて泣いて困る、みたいなものなんだ。

あたしをちゃんと女の子として好きで、だから泣かれると困る。

そんなんじゃないんだ、絶対に。










 

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