36.8℃の微熱。
「薫っ!あんまりからかうんじゃないの!どうしたのよ茜、ほら、お母さんに携帯見せて」
「あ、うん」
お兄ちゃんを一喝し、あたしの携帯を覗き込むお母さん。
お母さんが携帯に目を通す間にチラリとお兄ちゃんをうかがうと、ふんっ!と鼻を鳴らしてそっぽを向かれてしまった。
この態度は“オカンめ、いっつも茜の味方ばっかりしやがって”という気持ちの現れ。
あたしがまだ小さかった頃、たびたびお兄ちゃんに泣かされた。
そのときもよく今みたいにお母さんに怒られて、こんな態度。
体は大きくなっても、こんなところは昔と変わらないみたい。
「ユカちゃんって、前に話してくれた茜の友だちでしょ? 困ってるじゃない、行ってあげたら?」
そんなお兄ちゃんに少し懐かしい気持ちでいると、心配そうなお母さんの声が頭の上からした。
顔を見てもやはり心配顔をしていて、いつもあたしが話して聞かせるユカ様のことをすごく気にかけている様子。
「塾より友情。どうせ茜は助けてもらってばかりなんでしょ? こういうときくらい力になってあげなさい」