36.8℃の微熱。
 
───プシュー

『ドアが閉まりま〜す』


「・・・・つ、着いた」


それでも着いてしまった到着駅。

やれやれと重たい腰を上げて電車を降り、狭い改札をくぐる。


するとそこは海の匂いと波の音、それから観光客たちのワーワー、キャーキャーと騒ぐ声が聞こえるあたしの知らない場所だった。

こんな早くからご苦労だよね、まだ朝の8時だっていうのに・・・・。


でも、今日は猛暑になると天気予報で見てきたけど、想像していた“ザ・猛暑”って感じはしない。

たぶん海がもう目の前だからなんだろう、むしろ波の音が心地よくて気分的に涼しい。


「さて、探しに行きますか」


ぐぅ〜っと大きく背伸びをして、あたしは浜のほうへ歩きだした。

目指すは『海の家 どすこい』。

誰がつけた名前なのか。

お世話になるあたしが言うのもおかしな話だけど、ちょっとばかりセンスが・・・・ね。

すると・・・・。


「もしかして君、ユカの・・・・?」


突然、背後から呼び止められた。

低くていい声の男の人だ。
 

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