36.8℃の微熱。
 
そうとっさに声が出たのが先か、それとも体が動いたのが先か。

とにかく、ユカ様が水の入ったグラスを落としてしまったのを見たとたん、体が勝手に動いていた。


「大丈夫!? ケガはない!?」

「あ、茜ちゃん・・・・」

「ごめんね、ユカ様。あたし、ちょっと意地っ張りすぎたよ。片付けるの手伝うね」

「うん、うん・・・・ありがとぉぉ」


軽くパニックになっているユカ様の背中をさすりながら言うと、ユカ様は目に涙を浮かべて何度もありがとうと頷く。

そんなユカ様に、あたしの目にも自然と熱いものが込み上げる。


ユカ様もあたしも、ため息の原因は同じこと───どう仲直りをしたらいいか分からなかった。

けれど、きっかけはこんな感じだったけど、早いうちに仲直りができて本当によかったと思う。

だって聞きたいことがいっぱいあるんだもん、気まずいままの時間だってもったいないし。


片付けの途中でチラリとサトルさんのほうを窺うと、よかったな、とにっこり笑ってくれていた。

やっぱりサトルさんっていい人だなぁ。ユカ様にぴったりだ。
 

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