36.8℃の微熱。
 
その日の夕方───・・。


日没とともに閉店した『海の家 どすこい』の後片付けを終えたあたしたちは、浜へ出て夕日を眺めることにした。

昼間は忙しくて、海を見る余裕も改めて昨日のことを聞く時間もなかったけれど。

一段落ついた今は、まばたきをするごとに沈んでいく夕日を眺めながら、じっくりゆっくりと話を聞くことができる。


「ホントにごめんねぇ。昨日は、夜になったらサトルのバイクに乗っけてもらってドライブする約束だったんだぁ」


そう口を開いたユカ様は、夕日のせいなのか、ちょっと頬が赤い。


「そうだったの?」


と聞くあたしは、喉まで出かかっている“サトルさんのことが好きなの?”と聞きたい気持ちをぐっとこらえ、相づちを打つ。


「うん。ここまで迎えに来てくれるはずだったんだけど、時間になっても来なくてね」

「マジで!?」

「マジで。バイトも遅刻したことない人だから、心配になって電話してみたの」

「そりゃ心配だぁ」

「でしょ? そしたら、ちょうどバイクでコケたとこだったみたいで“死ぬ〜”って」
 

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