36.8℃の微熱。
 
「よいしょ」


あたしはそそくさと腰を上げた。

せっかくの機会だし、このままユカ様とサトルさんを2人きりにさせてあげようとも思うし。

ここまでご足労頂いた王子の相手をしないとならないし。

お邪魔虫は退散しますよー。


「あ、あたしも行くよ!」


ユカ様はそう言って急いで立ち上がろうとしたけれど、あたしはそれを「大丈夫」と断った。

“2人きりのチャンスだよ!”なんてサトルさんの前じゃとても言えないから、一応目でそれとな〜く合図を送りながら。

するとユカ様、その合図が分かったらしく、嬉しそうに声を弾ませながら言うんだ。


「もうちょっとしたら戻るね♪」

「はいはい、ごゆっくり〜」


この借りはいつか必ず返してもらうからね!と心に決めて、あたしは2人を残して浜をあとにした。


王子ともう一人、あたしにお客さんだとサトルさんは言っていた。

妙にカッコつけた大人の男・・・・一人心当たりがあるけど、その人が王子と一緒に来るわけないし。

お兄ちゃん、カッコつけたがりなとこがあるからなぁ。
 

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