36.8℃の微熱。
海の家に向かいながら、もう一人はさしずめお兄ちゃんだろう、と大方の予想をした。
それにお兄ちゃん、自分より顔がいい相手には変な対抗心を燃やすところもあったりして。
サトルさんにあたしの兄だと名乗らない場合だって考えられる。
中学の頃だって、いいなぁと思っていた男の子とたまたま一緒に歩いていたとき、その子に向かって言ったんだ。
『茜は俺の大事な女だから、手ぇ出したらあとで泣かすよ?』
って。
いやいやお兄、うちら家族じゃないですか・・・・。
その子の誤解を解くのに苦労したのは、何を隠そうあたしだった。
自分よりステキな顔の持ち主だったからね、あの彼。
タチの悪いからかいをしたってワケなんだ、お兄ちゃん。
そんな過去があるものだから、サトルさんを相手に自分の素性を明かさないことなんて珍しくもなんでもなくて。
“妙にカッコつけた”・・・・それにもバッチリ当てはまる。
「はぁ〜、しんど・・・・」
海の家に着くまで、何度こんなことを言いながら歩いたことか。
ホント、ドンマイあたし。