36.8℃の微熱。
 
「ま、ともかく、ここまで出張してきたからにはそれなりの成果を上げないと。俺も江田ちゃんも」


とか言っちゃって。

ちゃっかりバケーション気分な出で立ちの先生にだけは言われたくなかったけど。

でも、ここにいても正直することもなければ手伝えることもない。


サトルさん、厨房担当だったそうで、マリアンヌさんも男子のバイトが必要だったみたいで。

『どすこい』の店名のごとく力仕事がメインの厨房では、もともとの力が弱い女子は足手まといになるだけだという。

女子にできるのはせいぜいフロア・・・・だけどそれはユカ様の仕事。

バイト2人を雇うのがやっと、という状況のため、とうとうあたしにできることは一つもなくなってしまったのだ。


「ちょうどいいじゃん。江田ちゃんには遊んでる暇なんてこれっぽっちもないんだ、みっちり数学を叩き込んでやるよ」


先生にそう言われれば、拒否する理由なんてあたしにはない。

渋々ながら「はい」と言う以外にこれといった選択肢はなかった。

いつもドンマイ、あたし・・・・。





 

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