36.8℃の微熱。
 
「そこまで」


先生のその声とともに、向き合っていた問題用紙から目を離し、シャーペンを机に置いた。

すると、気を抜いたそばから採点をはじめる先生。

そして、赤ペンを指の間で器用にクルクル回しながらこう言う。


「ちょっと下行って飲み物もらってきてくれる? そしたら江田ちゃんも休憩していいから」

「何かリクエストは?」

「なんでも」

「は〜い」


汗一つかいていないように見えても、なんせ今は真夏だもの。

ああ見えて実は先生、よっぽど喉がカラカラだっんだ。

いつも涼しい教室でばかり過ごしているから、扇風機だけの部屋はかなり堪えるはずだよね。

先生のグラスに氷、いっぱい入れてもらおーっと。


「マリアンヌさ〜ん、飲み物2人ぶん頼みたいんですけど〜・・・・」


一階に下りると、店内では掃除と料理の仕込みの真っ最中。

そんな中申し訳ないなと腰が引けつつ、マリアンヌさんに頼んで冷たい飲み物をもらった。

もちろん先生のグラスにはたっぷりの氷を入れてもらって、採点中の先生のところへいざ。
 

< 211 / 555 >

この作品をシェア

pagetop