36.8℃の微熱。
 
夕食後。

コンコンッ。


「お兄、ちょっといい?」

「んあー」


部屋着に着替えたあたしは、さっそくお兄ちゃんに話しに行った。

ノックをすると、なんともおかしな返事が返ってくる。

同じ返事でもいいときと悪いときがあるけど、今はOKなようだ。


部屋に入ると、お兄ちゃんはベッドに仰向けに寝転がってバイク雑誌を読んでいた。

お兄ちゃんの部屋で唯一座れるのは、そのベッド。

でも今は、占領している上、どきそうにないから床に腰を下ろす。


「あのさー」

「んあー」


・・・・また? 今度はどっち?


「おら茜。早くしゃべれ」

「あ、はいはい。あのですね」


どうやらOKだったらしいお兄ちゃんは、バイク雑誌をパタンと閉じて、のっそりと起き上がる。

それから、大きなあくびを一つ。

面倒くさいんだね。


それにもめげず、あたしは申込書を持ってきたわけを話した。

お兄ちゃんは口が堅いから、たいていのことは黙っていてくれる。

特に今回のような場合は・・・・。
 

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