36.8℃の微熱。
 
「どうしたの、江田さん」

「・・・・あ、うん。別に」


先生のそんな言葉を思い出したあたしは、危うく100倍になるところだった課題を思って心の中でため息をつく。

爽やかイケメン君のほうは、不思議な顔から訝しげな顔に進化。

疑い深い目であたしを見る。


「そう?」

「そうそう!なんでもないよ!」


とは言ってみるものの・・・・。

ニパッと作り笑顔をして彼を見ると、まだ疑いの目であたしを見ている爽やかイケメン君。

話題を変えなければ。


「あ、そうだ!名前!」

「名前?」

「うん。申し訳ないんだけど、あたし、名前覚えるの苦手で・・・・。その・・・・お名前は?」


いつまでも“爽やかイケメン君”って呼んでいられないもんね。

その場しのぎだけど、話題も変えられて名前も聞ければ、ここは万事丸く収まるような気がする。

・・・・そんな願いを込めて爽やかイケメン君を見てみれば、彼はなんとも爽やかな微笑みとともにこう答えてくれた。


「俺は、浅野旺次郎。どうぞよろしく、江田茜さん」
 

< 35 / 555 >

この作品をシェア

pagetop