36.8℃の微熱。
「どうしたの、江田さん」
「・・・・あ、うん。別に」
先生のそんな言葉を思い出したあたしは、危うく100倍になるところだった課題を思って心の中でため息をつく。
爽やかイケメン君のほうは、不思議な顔から訝しげな顔に進化。
疑い深い目であたしを見る。
「そう?」
「そうそう!なんでもないよ!」
とは言ってみるものの・・・・。
ニパッと作り笑顔をして彼を見ると、まだ疑いの目であたしを見ている爽やかイケメン君。
話題を変えなければ。
「あ、そうだ!名前!」
「名前?」
「うん。申し訳ないんだけど、あたし、名前覚えるの苦手で・・・・。その・・・・お名前は?」
いつまでも“爽やかイケメン君”って呼んでいられないもんね。
その場しのぎだけど、話題も変えられて名前も聞ければ、ここは万事丸く収まるような気がする。
・・・・そんな願いを込めて爽やかイケメン君を見てみれば、彼はなんとも爽やかな微笑みとともにこう答えてくれた。
「俺は、浅野旺次郎。どうぞよろしく、江田茜さん」