36.8℃の微熱。
だからあたしは、たとえ今日が最悪の天気でも待っていたいの。
来る、来ない関係なくね。
別に先生の情に訴えたいとか、そういうんじゃないけど・・・・待つことであたしの気が済むから。
こうして待っている間も、浮かんでくるのは先生の顔ばかり。
今さらながらに思う。
恋のパワーは絶大なんだ、と。
そうして待つこと何時間だろう。
朝から夜みたいに暗かった空も、だんだんと本物の夜に移り変わろうとしていた頃───・・。
道路に溜まった水をバシャバシャと勢いよく跳ね上げながら一台のワゴン車が走ってきて。
そして、あたしの前で止まった。
「あれ、黒ま・・・・」
「何やってんの、江田ちゃん!!」
“黒丸”と言い終わるより早く、運転席から降りてあたしに駆け寄る先生の声が飛ぶ。
ザーザーと傘やカッパに当たる雨のせいで、今までは周りの音なんて聞こえないに等しかったけど。
なぜかこの瞬間だけは、雨の音も風の音も・・・・雑音と呼べるものは何一つ聞こえず。
先生の声だけがリアルだった。