36.8℃の微熱。
 
「はぁ。とにかく留守だったの。電気もついてなかったし、お兄さんだっけ? その人のバイクもガレージにはなかったし」


あたしのマヌケな“え?”を聞くと、先生は肩を落とし、心底呆れた顔でそう言った。

そして、続けてこうも言う。


「大丈夫、江田ちゃんの裸なんか見ても興奮するワケないから」

「なっ!!」

「それに、起きたら起きたでまた叫ぶんだろーなと思ってたし。着替えさせるときはサングラスかけたから。見てナイ見てナイ」

「・・・・」

「だからもう叫ばないでね、近所迷惑。俺も迷惑。分かった?」


そんなバカな話が・・・・。

家には誰もいないし、直接見られたワケではないとはいえ貧相な体を先生の前にさらしてしまい。

おまけに“興奮するワケない”とまで言われてしまうなんて。

厄日だ。厄日すぎる。


「ちょっと江田ちゃん、返事くらいしろよ。ポケッとするな」

「ああ、はい」


倒れたときとはまた違う意味で意識が飛んでいたんだろう。

気がつくと、先生があたしの顔の前でパタパタと手を振っていた。
 

< 365 / 555 >

この作品をシェア

pagetop