36.8℃の微熱。
 
それを思い出したのは、辛くもこのとき───次の日の朝のこと。

おかげさまで熱も下がって、学校にもなんとか行けそうで。

その前に先生に家まで送ってもらい、玄関を開けたときだった。


「ウウーッ、バウッ!」

「・・・・あ゙」


玄関マットの上で吠えるあんこ。

そうだった!

一昨日からお母さん、お父さんのいる大阪に行っているんだった。

単身赴任は苦労が多いからって、手作りの料理を持っていったり掃除をしてあげたり、大阪観光もしてくるとかなんとか。

で、あたしは「あんこの餌と散歩は忘れないで。薫は頼りにならないから」って言われて・・・・。


「あんこぉー!ごめんー!!」


あたしってホント、ダメな飼い主だよ・・・・こんな飼い主じゃ、あんこが怒るのも無理ないよ。

迷子じゃなくて、今度は本気で家出をされちゃうかもしれない。

あーもう、朝から泣きそうだ。


「ごめんー・・・・許してー・・・・」


恨めしい目であたしを見上げるあんこにそっと手を伸ばし、ギュッとギュゥーッと抱きしめた。
 

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