36.8℃の微熱。
 
昨日のこと、今朝のこと、ユカ様には聞いてもらいたいことが山のようにあったけど。

今はそんなの、あとでいい。

ユカ様が作ってくれたチャンスと王子の歩み寄りと、梅味の飴と。

・・・・先に“酸っぱい青春”を味わうことのほうが、今のあたしには必要なように思えた。





───*。゚


そうして迎えたお昼休み。

ご飯を食べ終わると、あたしは王子が待つ図書館へと向かった。

夏休みの前までは居残り対策のために勉強道具を持って行っていたけど、それはもういらない。

図書館の扉の前で、一つ、二つ、深く深く深呼吸をする。

そして、いざ。


「浅野君・・・・」


その扉を開けた。


「あ、茜。わざわざごめんな、図書館まで来させたりして」

「ううん」

「ここ、座って」

「うん」


王子はいつも勉強していた窓際の席ですでに待っていて、あたしに気づくと立ち上がって隣の席を勧めてくれる。

これもまた、いつものこと。

あとから図書館に入ってくるあたしに王子はそうしてくれていた。
 

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