36.8℃の微熱。
「まず先に謝らせてほしい。茜んちのパグのこと、軽率なこと言ってすごく傷つけて・・・・ホントにごめん。あれはどう考えても言っちゃいけない言葉だった」
あたしが席に座ると、王子は立ったまま、そう言って頭を下げた。
そして、その姿勢のまま続ける。
「考えたんだ、もし自分の家族の誰かが突然いなくなったらって。そしたら“そのうち”とか“ひょっこり”なんて曖昧なこと、絶対に言われたくなかった。ふざけんな!って殴りたくなった」
「浅野君・・・・」
「だからごめん。ホントに・・・・」
王子の肩が震えていた。
頭を上げないと表情まては分からないけど、その様子がなんだか泣いているようにも見える。
王子、あたしの顔を見るたびに後悔していたんじゃないかな。
だとしたら・・・・。
「もういいよ。あのあと、ちゃんと見つかったの。あんこ、今じゃ迷子になったことも忘れて毎日元気にしてるから」
「そっかぁ、よかったぁ」
そう言った王子の頭が上がる。
見えた表情は、泣いてこそいなかったけど涙で目が潤んでいた。