36.8℃の微熱。
 
王子のその目を見ただけで、あたしはもう十分だと思った。

自分の家族のことに置き換えて考えてくれたり、心配をしてくれたり・・・・それだけで十分。

そもそもの原因はあたしにある。

リードを外したのに、目を離したのはあたしなのだから。


「うん。だからもう、あんこのことは気にしないで。あたしも突き飛ばしたりしてゴメン」

「うん、俺のほうこそ」


やっと1つ、胸につっかえていたものが取れた気がした。

突き飛ばしてしまったことをずっと謝りたいと思っていたけど、なかなかうまくいかなかったから。

今言えてよかった。


けれど、すぐには安心できない。

あたしには、王子に言わなきゃならないことがもう1つある。

これは王子にとってすごく残酷で辛いだろうことで、悲しいこと。


でも、王子もけしてあんこのことを謝るためだけに“話したいことがある”と昼休みに呼び出したわけじゃないはずなんだ。

そう思うと、あたしの心臓はいよいよ早鐘を打ちはじめて。

胸の中いっぱいに、ユカ様がくれた飴の酸っぱい味が広がった。
 

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