36.8℃の微熱。
「あのね、浅野君。・・・・単刀直入に言っちゃうと、実はあたし」
ありったけの勇気を振り絞って、なんとかそこまで言う。
そしてスーハースーハー、胸に手を当てて何度か深呼吸をする。
王子もあたしの答えを分かっているのなら、なおさらだ。
携帯やパソコンが普及して直接言葉を交わさなくても事が運ぶ便利な世の中だけど・・・・やっぱりこれは自分の口で伝えるべきこと。
電波で届けるわけにはいかない。
「実はあたしね、せん───・・」
「待って。それ以上は、待って」
けれど、その声とともにスッと伸びてきた手によってあたしの言いかけた口はふさがれてしまった。
いきなりこんなことをされるとは思ってもいなくて、あたしは驚いて目を見開くだけ。
そうすると、見えたのはすごく辛そうな表情で目を伏せる王子。
手を振り払って意地でも“先生が好きなの!”と言おうと思ったけれど、それはできなかった。
「・・・・俺だって分かってる。茜が好きなのはアイツだって。でも、それを茜の口から聞きたくない。悪いけど、ちょっと黙って」