36.8℃の微熱。
・・・・だって、そう言った王子が本当に辛そうだったから。
頭では分かっていても、心が耐えきれずに拒絶してしまうんだ。
「ごめん。俺のワガママ。分かってるから言わないで。茜にだけは泣くとこ見せられないから」
王子、そんなに・・・・。
あたしの口をふさぐ手が、カタカタと小刻みに震えている。
そこから王子の気持ちが漏れ伝わってくるようで、あたしはただ、黙って頷くしかなかった。
「ありがと。女々しくて嫌になるよな、ホント・・・・」
するとあたしの意思表示が伝わったらしく、小さくつぶやいた王子が手を離してくれた。
そこでようやくあたしの口は自由になったのだけど、でも。
「・・・・ううん。分かってたよね、全部。さんざん気を持たせるようなことして、ホントにゴメン」
出てきたのは、誰にでも考えつくような安上がりの言葉。
気の利いた・・・・とは表現が違うけれど、もっとほかに伝えられる言葉があるはずなのに。
それが言えなかった。
「いいよ、済んだことは。それになんとなく予感はあったんだ」