36.8℃の微熱。
 
・・・・だって、そう言った王子が本当に辛そうだったから。

頭では分かっていても、心が耐えきれずに拒絶してしまうんだ。


「ごめん。俺のワガママ。分かってるから言わないで。茜にだけは泣くとこ見せられないから」


王子、そんなに・・・・。

あたしの口をふさぐ手が、カタカタと小刻みに震えている。

そこから王子の気持ちが漏れ伝わってくるようで、あたしはただ、黙って頷くしかなかった。


「ありがと。女々しくて嫌になるよな、ホント・・・・」


するとあたしの意思表示が伝わったらしく、小さくつぶやいた王子が手を離してくれた。

そこでようやくあたしの口は自由になったのだけど、でも。


「・・・・ううん。分かってたよね、全部。さんざん気を持たせるようなことして、ホントにゴメン」


出てきたのは、誰にでも考えつくような安上がりの言葉。

気の利いた・・・・とは表現が違うけれど、もっとほかに伝えられる言葉があるはずなのに。

それが言えなかった。


「いいよ、済んだことは。それになんとなく予感はあったんだ」
 

< 386 / 555 >

この作品をシェア

pagetop