36.8℃の微熱。
けれど、あたしの意に反して王子はそう言う。
そして、少しだけあたしに微笑むとすぐに悲しげな表情に戻り、絞りだすように言葉を続けた。
「悔しいから言いたくなかったんだけど、茜が好きになるのは俺じゃないんだろうなって。だから、それを認めたくなかっただけ」
「・・・・うん」
「ずっと避けてたのはそのためだった。認めたくなくて、フラれるのが怖くて・・・・。茜の答えを聞くのを先延ばしにしてた。うやむやなまま時間が過ぎればいいのに、とか思ったりしてさ」
「そっか、うん・・・・」
「だから茜は気にすんな。な?」
あたしにも葛藤があったように、王子も葛藤していたんだ。
さっき王子は自分のことを“女々しくて嫌になる”と言ったけど、それは違うと思った。
言葉にするのも辛いだろう胸の内をこうして打ち明けてくれた時点で、王子はもう強い。
弱い自分と戦って、打ち勝って。
それでもまた傷つくことを選択した王子は、あたしから見たら女々しくなんてちっともなくて。
人間の“強さ”そのものを、王子に教えてもらった気がした。