36.8℃の微熱。
 
「もやしさん、よろしくね」


そんな複雑な気持ちではあったけど、とりあえず席替えのあいさつをしようと話しかける。

クラスの中でもとりわけ目立たない彼の名前を、あたしはいまだ分からず・・・・なもので。

申し訳ないけど、男子たちがときどき呼ぶ“もやし”というニックネームを使わせてもらった。


「よよよ、こちらこそよろしくお願いしますん!江田すん!」

「あは・・・・」


なんだ、コイツ。

けれどもやしさんは、真っ赤になるわ、噛み噛みになるわ。

お隣さんになったからには、せめて本名だけでもきちんと知りたいのだけど・・・・先行き不安だ。


「どぅわー!! 申し訳ありますん江田すん!乙女から話しかけられるなんて人生初なもので!!」

「ああ、そうなの」

「ヘイ!!」

「・・・・」


ちょっと話しかけただけで茹でもやしになる彼とまともな会話ができる日はいつになるのやら。

というか、来るのだろうか。

次の席替えまでに・・・・。

ツッコミどころも多すぎて、もはや何からツッコんだらいいか。
 

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