36.8℃の微熱。
 
嫌だ嫌だと思っていても、それでも時間はあたしに容赦ない。

だいぶトボトボ歩いたのに、15分で塾に着いてしまった。


「こんにちは〜」


受付のお姉さんがニッコリ笑ってあいさつをしてくれる。

あたしはそれにペコリと頭を下げて「あの・・・・」と話しかけた。


「はい?」

「あの、片桐先生はいらっしゃいますか? 申込書を持ってきたのですが、直接手渡すように言われていまして」

「はい、数学の片桐ですね。おりますよ。そこの椅子に座ってお待ちください。もう少しで講義が終わりますから」

「分かりました」


そんな短い会話を交わして、あたしは言われた通りロビーに設置されている丸椅子に座った。

受付のお姉さんは、またニッコリと笑ったあと席を離れていく。

メモを手に持っているのが見えたから、先生の机に置きに行くんだろうな、なんて思った。





お姉さんが戻ってきて、それから少しすると、チャイムが鳴った。

どうやら講義が終わったらしい。

なぜだか無性に帰りたくなったけど、そこは我慢我慢、と。
 

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