36.8℃の微熱。
 
あたしの左隣の椅子に座り、申込書をまじまじと確認する先生。

無口なときはそれなりに見えるけど、ひとたび口を開けば憎たらしいことばっかり。

敵意むき出しで魔王の様子を窺うあたしは、きっと体中から負のオーラを出しているに違いない。


やがて申込書から目を離した先生は、ふっとあたしに目を向ける。

そして・・・・。


「よくできました!」


と、あたしの頭に手を置いた。

その仕草と思ってもみない優しい声に一瞬ドキッと心臓が跳ねる。

顔だって赤くなりそうだった。

でも・・・・。


「いだだだだだだっ!!」


いきなり力を込めて撫でるものだから、頭全体が揺れて、おまけに視界もグラグラ揺れた。

そうだ、片桐先生ってこういう人だったんだ!

『アメとムチ』・・・・自称そう呼ぶこれは、あたしには紛れもないイヤガラセというヤツで。


「江田ちゃん、江田ちゃん。前見てみ? すごいことになってる」

「そりゃなりますってば!」

「ぷぷっ。傑作〜!」


こんの、俺様魔王めがっ・・・・!!
 

< 42 / 555 >

この作品をシェア

pagetop