36.8℃の微熱。
 
「・・・・おい、チャーハン戻せよ」

「イヤ!」

「戻せってば!」

「ヤだ!食うったら食うの!!」


どうしてもチャーハンをお皿に戻させたい先生と、どうしても口に入れたいあたしと・・・・。

ギリギリ、ギリギリ。

まるで綱引きで力が均衡しているときのように、先生の手もあたしの手もピクリとも動かない。


「レンゲから手を離せ」

「先生が離してよ!」

「強情な!」

「ヘンッ!どっちがですか!」


ただ、口だけは達者に動く両者。

言われたら言い返す、を繰り返しながら、チャーハンをかけてあたしたちはしばらく睨み合った。


すると───・・。

ブー、ブー、ブー・・・・。

絶妙なタイミングで、カウンターの上にあった携帯が鳴りだした。

もちろんそれはあたしの携帯。

ユカ様からの報告がやっと!!


「もしもしっ!ユカ様!?」


チャーハンなんて、そんなのもうどうでもいい。

あんなに執着していたレンゲからバッと手を離し、あたしは携帯を引っつかんで耳に押し当てた。
 

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