36.8℃の微熱。
「ところでさぁ茜ちゃん、さっき店に入ってきたとき、どうして柊の機嫌が悪くなったと思う?」
すると、お釣りを手渡しながら細田さんが急に話題を変えてきた。
え? それは、自分には“いらっしゃい”って言ってもらえなかったからでしょ? 違う?
それを言うと、細田さんは違うんだなぁ〜と顔のお肉をたっぷり揺らしながら首を振る。
「・・・・あれはねぇ、柊の照れ隠しなんだよ。昔っからそうなんだ」
「あんなドS発言が!?」
「そう」
“そう”って細田さん・・・・。
そんなにニッコリ笑って言われても、あたし理解し兼ねますけど。
「ブタ!」って言ったり「とっとともてなせ!」って言ったり、鼻で笑ったりもしたんだよ?
照れ隠しの範囲外じゃない?
けれど細田さんは違うらしい。
「前にさ、茜ちゃんは柊のお気に入りだから諦めなって言ったの覚えてる? ドベ子って紹介されて超怒ってたときの」
そう言って、線のように細い目を精一杯見開いて、あたしの顔をまじまじと眺めてきた。
細田さんの目、意外とつぶらね。