36.8℃の微熱。
 
───とはいうものの。


「じぃーっ・・・・」

「なんだよ江田ちゃん、運転の邪魔なんだけど。見ないでくれる? その笑える顔で」

「わ、わらっ!? どこがですか!江田家全員を敵に回す気!?」


帰りの車の中。

細田さんから授かった攻略法をさっそく試していたのだけど、肝心の“照れそうなこと”が思い浮かばないあたし。

何かないかと先生の顔を見ていたら、やっぱり一言多いこの人。

軽く殺意がわいた。


「んな大げさな。よからぬことを企んでる顔だからだって。細田から何か吹き込まれたんだろ?」

「ちっ、違います!」

「嘘がヘタすぎ。図星だ」

「むぅ・・・・」


言葉に詰まると、先生はハンドルを握りながらチラッとあたしを見て得意げに鼻を鳴らす。

ほら、どうせこうなるんだって。

いくら授かったって、照れさせることができなきゃ元も子もない。

ヘンッ!とそっぽを向いて、あたしは窓の外を恨めしく眺めた。

細田さんは先生を「振り回してやんな」って言っていたけど・・・・この調子でできるだろうか。
 

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