36.8℃の微熱。
「それにしても、ホントよかったよなぁ。これで江田ちゃんも心置きなく数学に集中できるワケだ」
しばらくすると、赤信号で止まった先生が楽しそうにそう言った。
ハンドルを指でトントンと叩いて軽快なリズムを取りながら。
「そうですね。ユカ様の幸せのためなら、あとで倍になる課題にも勇敢に立ち向かえますよ」
「ははっ。だよねぇ」
「ええ、そうですとも」
あたしは、まだ窓の外に目を向けたまま少し皮肉っぽく答える。
どんな事情があろうと先生は出した課題は必ずさせる人だ・・・・次の居残りはきっと大変になる。
分かっているけど、気が重い。
はぁぁぁぁ〜・・・・。
「でもさぁ、江田ちゃんたちを見てるとすげーなって思うよ」
すると、珍しいこともあるもので先生が感慨深げにそう言う。
信号が青になり、アクセルを踏み込みながらため息までついて。
「・・・・何がすげーんですか?」
「だって、勉強も友だちも恋愛も全部一生懸命じゃん? 俺が高校生のときなんてまるで無気力で。よく体力もつなって感心する」