36.8℃の微熱。
 
「はぁあ〜、行きたかったなぁ、マック・・・・。新発売のヤツ、めちゃめちゃ興味あったのに」


なんて言いながら、下駄箱で靴を履きかえて生徒玄関を出る。

ユカ様が幸せだとあたしも幸せだけど、ちょっと寂しい気持ちになるのはなんでだろうな・・・・。


ふと見上げた10月の空は涙が出そうなくらいキレイに澄んでいて。

あたしは“そんなにキレイだと泣けてくるでしょ”とぼやける視界を空のせいにして鼻をすすった。


すると───・・。


「俺でよかったらつき合うよ?」


背後から声がかかった。

慌てて目をこすって涙を消して、声の主を確かめる。

・・・・といっても、あたしに声をかけてくる男子なんて王子くらいしかいないんだけどね。


「どう? 新発売のヤツ、めちゃめちゃ興味があるんでしょ?」

「・・・・聞いてたんだ、浅野君」

「いや、聞こえたの」


王子はニコニコ笑っている。

けれどあたしは、その逆。

やっぱりまだ王子と話すにはユカ様の力が必要みたいで、どう会話をしたらいいか困ってしまった。
 

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