36.8℃の微熱。
 
「・・・・なんで浅野君、そんなにあたしの気持ちが分かるのよ」


少しシャクに触ったあたしは、軽くほっぺたを膨らませた。

前にも、千里眼の持ち主なのかもと感じたことがあったけど、今回の王子はそのときの比じゃない。

すると、王子はフフンと笑って。


「たぶん、茜のことを客観的に見られるようになったからかな」


と。

満足そうに言った。


「前の俺は、自分の気持ちを押しつけるばかりで茜が何を思うかなんて考えてなかったんだ」

「あ、うん」

「でも、フラれて少し時間が経って、やっと冷静になれたっていうか・・・・茜のことが見えてくるようになった。ま、そういうコト」

「はぁ、そうなんだ」


恋をしているときって、確かに周りが見えなくなりがちで、ときには暴走しちゃうこともある。

“客観的に”とか“冷静に”なんて簡単にはなれないものだよね。


「だからよかったと思ってるよ。あのままだったら俺、もしかすると嫌がる茜を無理やり自分のモノにしてたかもしれないし」

「なっ・・・・!!」

「冗談」
 

< 460 / 555 >

この作品をシェア

pagetop