36.8℃の微熱。
 
意地悪な顔でニッと笑う王子。

そんな王子に対して、今度は軽くじゃなく、ぷくぅーっとフグみたいにほっぺたを膨らませて不機嫌さをアピールするあたし。

もうっ!なんなのよ、王子まで!先生に似てきたんじゃない!?

そうすると、王子は「まぁまぁ」とあたしをたしなめてから言う。


「ともかく、今茜が不安に思ってることを言ってみて。弱音を吐けば楽になるでしょ?」

「・・・・なんでよ。そしたらダメじゃんか。弱音を吐いたらユカ様に言えなくなりそうだもん」


まだ腹の虫がおさまらないあたしは、ぶっきらぼうにそう答える。

王子が言うように、弱音を吐いたらきっとあたしは楽になれる。

でも、それだと迷いがますます強くなって結局話せないのがオチ。

分かってないなぁ、王子。


「違うよ。分かってないなぁ」


けれど王子は、あたしとは違う意味で“分かってない”と言う。


「え、何が分かってないの?」

「弱音を吐いたぶん気持ちに余裕ができるでしょ? そしたら、そこに宇佐美さんに正直に話す勇気を注入すればいいじゃん」
 

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