36.8℃の微熱。
 
すると。

若干痛みが引いてきたのか、まだ辛そうではあるけどうっすらと目をあけてあたしを見た先生。


「そうだな。とりあえず、代償として江田ちゃんの唇でも奪っておくか。ほれ、目ぇつぶれ」

「・・・・え」

「何してんの早く。江田ちゃん、目ぇあけたままキスすんの?」


と、冗談とは受け取りがたい感じで、けれど本気にしてはあまりにも冗談っぽく命令してきた。

何コレ、あたしヒロイン!?

いやいやいや、こんなおいしい話があるワケないじゃないかっ。

そう思い直して、考えつくだけの“キス”の理由を並べてみる。


「先生、寝ぼけてるんでしょ?」

「んなバカな。今のでまだ寝ぼけてられたら相当のもんだよ」

「じゃあ冗談でしょ?」

「どうだろ?」

「うっ。なら、頭打ってちょっとおかしくなっちゃったとか?」

「残念。打ったのは背中だけ」


けれど、先生はこの通り。

寝ぼけてもいなければ冗談でもなく、頭は打っていないと言う。

それって、それって・・・・まさかまさかの本気だったりしますか!?
 

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