36.8℃の微熱。
 
相当怒らせてしまったみたいで、目つきは鋭く、語気も強く、まるで本物のネズミを見るような目であたしを睨んだ。

それから彼女はスッと席を立つ。


「私は帰るわ、あとは自分でやってちょうだい。低能なネズミには何を言ってもムダなようね」


吐き捨てるように言って、ツカツカとヒールの踵を鳴らして教室を出ていってしまった。

その足音が廊下から聞こえなくなった瞬間、あたしの目からは堰を切ったように涙が溢れだす。


「・・・・ごめん、先生」


1人ぼっちになった教室で、あたしは声を殺してしばらく泣いた。

彼女は知っているんだ。

先生とあたしの、ちょっと普通じゃない関係のことを。


「先生、ごめん・・・・」


こんなことをしたくて好きになったんじゃないんだよ、あたし。

ただ、好きだと伝えたかったの。

先生の講師としての立場を危ぶめたり困らせたり、そんなことをしたくて好きになったんじゃない。

だけど・・・・。

あの人が言うように、先生のことを思うなら諦めるべきだ、それしか先生を守る方法はない。
 

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