36.8℃の微熱。
 
「うん、ちょうどいいよ。悩みが1つ減るもん、ちょうどいい」


ゴシゴシと手の甲で涙を拭って、そう自分に言い聞かせる。

諦めたら先生のことで悩む日々から解放されるし、ユカ様とのことをもっとちゃんと考えられるし。

キスしそうになったことも、引っぱたいちゃったことも、このままうやむやになってしまえばいい。


昨日王子から送られてきたメールには、あたしは先生に告白されたって書いてあったけど。

今日も迷うなって言われたけど。

・・・・もう迷える段階じゃない。


「これでいい。うん、これで」


こうしてあたしは、何度も何度も自分に言い聞かせて納得させて、先生を諦める決心を固めた。

いちいち勘に触る言い方をする人だったけど、あの女の先生が言ったことは正しいと思ったから。

だから、うん。

いいんだ、これで・・・・。


出された課題もそこそこに、涙を目の奥に閉じ込めて塾を出る。

見上げた夜空にはまん丸い月がぽっかりと浮かんでいて、その淡い光がやけに目に染みた。










 

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