36.8℃の微熱。
Chapter.5*お熱

日常な非日常

 
「いってきまーす」


12月の肌寒い朝。

「いってらっしゃい」と、玄関先で見送ってくれるお母さんとあんこに言って家を出る。

お兄ちゃんはまだ爆睡中。

いつもホントに不思議に思うんだけど、あんなグータラ生活でよく単位を落とさないものだよね。

我が兄ながら感心だ。


「茜!マフラーはちゃんと巻きなさいよ!首から風邪引くから!」


10メートルくらい歩いたところでお母さんから声がかかった。

あたしは歩きながら振り返る。


「ファッションなの!」


ニヒッと笑って、道路まで出てきたお母さんの小言が聞こえてこないうちにダッシュで逃げた。

そう、これはファッション。

ユカ様とお揃いの。


クラスの女の子たちは、みんな申し合わせたようにマフラーの先を首の後ろで結んでいるけど。

ユカ様だけは、緩く2〜3回巻いただけで先は結んでいない。

もう話さなくなって1ヶ月が経とうとしているけど、あたしはまだ仲直りしたいと思っているから。

そのキッカケになればいいなと、お揃いの巻き方にしている。
 

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