36.8℃の微熱。
「おーい、浅野ー!活字ばっか読んでるとバカになっぞ!いいもん見せてやっからこっち来いよ!」
「バーカ。お前にだけは言われたくねぇつの!なに、どれ?」
教室のもう一方では、木場君に呼ばれた王子がそう言いながら彼のところへ歩いていった。
最近木場君と仲のいい王子は、前より笑顔が格段に増えている。
「ほら、見ろよこれ!このバイクすっげーカッコいいだろ!」
「そうか? 俺はこっちかな」
「マジ!? お前センスないのな」
「それはこっちの台詞」
なんて言い合いながら、楽しそうにバイク雑誌に目を落とす。
王子とも、あの日「迷うな」と言われてからは全然話していない。
たまにほんの少し目が合ったりはするけど、王子からもあたしからも連絡は取らなくなった。
それには、ユカ様の手前・・・・っていうのももちろんある。
学校で話したり、ユカ様の知らないところで連絡を取り合うのはあたしの心が許さなかった。
たぶん王子も。
でも、もう一つ大きな要因があって・・・・それはやっぱり「迷うな」と言われたこと。