36.8℃の微熱。
 
あたしがまた何か問題を抱えて助けを求めたら、きっと王子は自分の心をすり減らしててでも力を貸してくれるだろうから。

それだけはしたくなかった。

勘の鋭い王子のこと、何も言わなくてもあたしを見ていたら分かってしまうとは思うけど。

頼れないもの、王子には・・・・。


だからあたしは言わない。

王子も踏み込まない。

王子は王子の世界、あたしはあたしの世界で日々を過ごしている。





───*。゚


そうして放課後になると、まだかすかにジンジンと鈍く痛む胸を抱えながら塾へ向かう。

先生を目で追わなくなったとはいっても、声や気配や匂いなんかは見なくても感じてしまって。

だからいまだに少し胸が痛い。


「この問題はちょっと難しいかもしれないど、俺の言う通りに解けば間違いないから。いいかー? じゃあ、まずは───・・」


今日も先生の声が教室に響く。

相変わらずの俺様っぷり。

まったく・・・・。

どこからそんな自信が湧いてくるんだろう? 少しでいいからあたしにも分けてほしいよ。
 

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