36.8℃の微熱。
あたしは慌てて席を立って、自動ドアのほうに目を走らせる。
「裏の駐輪場にバイクを停める」と言ってからもうずいぶんと時間が経つけど、そういえばサトルさんは店に入ってきていない。
バイクって停めるのにそんなに時間がかかる乗り物なの? 車でさえ数十秒なのにおかしくない?
「座って、茜ちゃん」
「あ、いや・・・・」
「いいから座って。どうやらあたしたち、サトルに一杯食わされたみたい。見てコレ」
「・・・・へ?」
促され再び椅子に腰を下ろすと、ユカ様は困ったように少し笑ってあたしに携帯を見せてきた。
あたしはおずおずと携帯を受け取り、画面を食い入るように見る。
「【ユカへ。いつまでも意地張ってないで素直になれ!目の前にいるのは、サトルクロースからのとびっきりかわいい贈り物】・・・・って書いてある」
「ふふっ、あいつバカでしょ? サトルクロースってさぁ、ダサいにも程があると思わない?」
「これって・・・・」
「うん、そういうコトみたい。いろいろゴメン。茜ちゃん、あたしと仲直り・・・・してくれますか?」