36.8℃の微熱。
 
すると。

ココアに添えていたあたしの手をユカ様がふわりと取った。


「こっち向いて、茜ちゃん」

「・・・・ん?」


顔を向けると、とびっきり優しく微笑むユカ様と目が合う。


「あたしもきっと同じことをしたと思う。もしあたしが先生の気持ちを知ってて茜ちゃんが足踏みしてたら、サトルや浅野君がどんなに反対しても“気持ちを伝えるべきだ”って言ってたと思う」

「・・・・ユカ様」

「あたし、自分の力でサトルとつき合えたんだって勘違いしてた。茜ちゃんが悩んでるのも気づかないで浮かれて・・・・親友なのにね」

「うん・・・・」


ユカ様の温かい手や表情、言葉から気持ちが伝わってくる。

考えていることはきっと同じだ。


友情の難しさ、自分が取る行動の重み、その行動で大きく左右される近い未来の人間関係・・・・。

あたしたちはまだまだ子どもで、大人たちに比べたらすごく平和な世界で生きているけど。

そんな世界でも1つ間違えると平和は一気に崩れ去って、修復が困難になってしまう。

子どもの世界もヤワじゃない。
 

< 512 / 555 >

この作品をシェア

pagetop