36.8℃の微熱。
 
ベッドに場所を移して、封筒の中から2つ折りの便箋を取り出す。

あのとき確か、マリアンヌさんはこう言って手紙を渡してくれた。

『あなたが今後、どうしても何かに頼りたくなったときに封筒を開けること』『最後のトリデ、そう思って持っときなさい』って。

今がそのときなんじゃないかな。


「・・・・よしっ!」


目をつぶって深呼吸を3回、それから2つ折りの便箋を開く。

書かれていたのは、かわいい便箋には不釣り合いなイカツい文字。

けど、マリアンヌさんらしい愛が溢れたステキな手紙だった。


―――――
―――


拝啓 茜ちゃん


この手紙を読むときが来ないことを願いつつ、こうして筆を取ったアタシを許してください。

アタシはご存知の通り、女子になりたいオッサンです。

初めてアタシと対面したとき、茜ちゃんはさぞかし驚いたことでしょう。ビックリさせてゴメンね。

だけどアタシは、そんな自分が大好きだったりします。

普通じゃなくてもいいの、女子になりたいオッサンという自分に誇りを持って生きています。
 

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