36.8℃の微熱。
そう聞くと、お母さんの表情はみるみるうちに困惑していった。
ああ、辛いな。
当たり前だけど、お母さんにしたら“普通”に恋をしてほしいと願っているはずなんだよね。
でも、あたしが恋をしたのは塾の先生───大人で立場もあって、歳の差だってかなりあって、きっと制限されることばかり。
快く送り出してくれるとは・・・・。
「茜、お母さんね」
「うん」
困惑の表情を浮かべたまま、お母さんが静かに口を開いた。
分かっている、次に言われるのは否定の言葉だろうということは。
ゴメン、でも・・・・。
───が、しかし。
「大変なことになったわ。クリスマスケーキ、一番小さいサイズで予約しちゃったのよ。先生のぶんが足りないわ!どうしましょ!!」
「・・・・は?」
「今からでもサイズの変更ってできるのかしら!? 電話電話!!」
「・・・・はっ?」
「茜、なんでもっと早く言ってくれなかったの!お母さんね、あんたが先生を好きだってことくらいとっくに知ってたわよ!」
「え、えぇぇぇぇっ!!」