36.8℃の微熱。
 
そう聞くと、お母さんの表情はみるみるうちに困惑していった。

ああ、辛いな。

当たり前だけど、お母さんにしたら“普通”に恋をしてほしいと願っているはずなんだよね。

でも、あたしが恋をしたのは塾の先生───大人で立場もあって、歳の差だってかなりあって、きっと制限されることばかり。

快く送り出してくれるとは・・・・。


「茜、お母さんね」

「うん」


困惑の表情を浮かべたまま、お母さんが静かに口を開いた。

分かっている、次に言われるのは否定の言葉だろうということは。

ゴメン、でも・・・・。


───が、しかし。


「大変なことになったわ。クリスマスケーキ、一番小さいサイズで予約しちゃったのよ。先生のぶんが足りないわ!どうしましょ!!」

「・・・・は?」

「今からでもサイズの変更ってできるのかしら!? 電話電話!!」

「・・・・はっ?」

「茜、なんでもっと早く言ってくれなかったの!お母さんね、あんたが先生を好きだってことくらいとっくに知ってたわよ!」

「え、えぇぇぇぇっ!!」
 

< 521 / 555 >

この作品をシェア

pagetop