36.8℃の微熱。
 
「もしもし、ケーキ屋さん?」


お母さんは絶対、先生がカッコいいからとか好青年だからとか、そんな理由で反対しないんだ。

・・・・好青年かどうかは別にして、先生は文句なしにカッコいいしお母さんも気に入っている。

あたしが海の家に行くことになったとき、先生に出張講師を頼んだくらいだもん、間違いない。


「24日にクリスマスケーキの予約をした江田と申しますけど、今からサイズの変更は───・・?」


だからって、やっぱりあっさりしすぎだとあたしは思う。

親のお母さんがGOサインを出しているのに、娘が「よく考えろ」と言うのもおかしな話だけど。

二つ返事で「反対しない」と言われると、素直に喜べない。


「・・・・あら? 留守電だわ」

「お母さんっ!」


受話器を置いたところで、あたしはお母さんに詰め寄った。


「先生を好きなことを前から知ってたのは分かった、でもなんで? 普通、知ってたら止めてるよ。そこんとこ、ちゃんと言ってくれなきゃ分かんない!」


すると、お母さんはあたしの肩に優しく手を触れた。
 

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